COLUMN

コラム

日本人の識字率は、ほぼ100%だという。しかし、貧しく教育が十分に受けられない国(南スーダンやニジェール共和国など)では識字率が低い。パソコンやスマートフォンが世界中を席巻しているこのような現代社会の中で、世界にはまだ文字が読めないでいる人が驚くほど多くいる。

そんな時、小・中学校の新指導要領を見る機会があり、じっくりと読んでみた。気づき、止まったのが常用漢字のところだった。2010年11月30日に公示された改定常用漢字表に含まれる漢字は2,136字/4,388音訓[2,352音・2,036訓]から成っている。一般の方は知らないと思うが、高校生になると新しく常用漢字を習うことはない。大学入試で必要とされる漢字は、全て中学校までで習い終わっている。小学校で習う漢字の数は1,026字。中学3年間では1,110字を学習する。小・中学校9年間でこれだけの漢字を習うのである。これだけでもすごいことだが、文字ということでは日本の子どもは漢字だけ習うわけではない。漢字の他に「ひらがな=46個」「カタカナ=46個」と、中国を除き他の国では考えられない3種類の文字を集中的に習うのである。しかも、「ひらがな、カタカナ」は小学校で習う。
こうして気づかないうちに、ほとんどの子どもが文字を習得して行く。だから識字率がほぼ100%、納得できる。そして明治時代からの学校制度の制定で、教育を武器にし日本を世界でも有数の経済立国へとのし上がることができたのである。

なぜ、このようなことができたのだろうか。文化的な側面も大いにあるが、日本の教育は国が定めたカリキュラムに従い、年間の授業日数も多く、特に国語や算数(数学)では基礎学力の習得に重点を置いているからである。文字学習は、その象徴とも言える科目であろう。
欧米などの先進国では日本ほど厳しい一律のカリキュラムはないので、「楽しみながら学ぶ」というアプローチが広く受け入れられている。科目ごとの多様性を非常に重視した授業をしており、アプローチに大きな違いがあるのである。詰め込み気味でも基礎力重視の教育なのか、多様性を重んじてそこから見えてくる応用性を重視する教育なのかの違いである。
これだけが物差しではないが、ノーベル賞が今まさに発表される直前である。欧米諸国と比べ日本人の受賞者が少ないのは、何かこの教育制度の違いがあるのではないかと思っている。「楽しみながら学ぶ」そうしてあげたいものである。

<参考>小・中学校で子どもが習う文字
中国語約3,500文字、英語・フランス語は26文字、ドイツ語は30文字、イタリア語は21文字、ロシア語33文字、韓国(ハングル)語24文字など

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