先日、学校の先生が足りないと言う記事が大きく取り上げられていた。教職の現役を引退し73歳になる男性に、教育委員会から突如教員が足りず1ヶ月でよいので現場に出てほしいとの要請があったと言う。これまでも毎年、週に1コマ程度の依頼はあったという。男性は依頼を受けた。しかし、この週13コマの授業はパソコンの授業の導入や年齢も手伝って、かなりきつかったと述べている。延長の依頼もあったが、悩んだ末に断ったとある。今、学校に教える先生がいない?嘘のような話である。
1979年公立学校の小中高教員採用試験の受験者数は約25万8千人あった。しかし2020年度は13万8千人まで 減少している。ほぼ半分である。なぜ、ここまで教員志望者が減ったのだろうか。前にも述べたが、厳しい労働環境が大きく起因している。日本の先生は今でも24時間、365日先生なのである。公私の区別どころか、仕事の区分すら不明確な状態で働かされている。先生は教えることが仕事であり、事務書類作成や保護者対応などは本来の仕事ではない。日本の先生のような職場環境で働かされているのは世界でも稀である。
資源がない島国を世界第3位の経済大国まで押し上げてきたのは、他国にはなかった寺子屋に始まる教育の力だと思う。明治維新後は、全国民にしっかりとした教育を受けさせてきたことが国の繁栄に繋がって来た。日本では「教育」は当たり前なものとなっている。2018年ユニセフ発表では、世界で3億3百万人もの子どもが現在教育を受けられていないと言う事実 があるのに。
日本人は教育を受けられるのは当たり前。学校があるのも、先生がいるのも、プールがあるのも、クラブ活動があるのも、給食があるのも、みんな当たり前だと思っている。だから、その当たり前がほんの少しでも崩れると、多くの場合、親が「モンスターペアレンツ化」してしまうのである。この当たり前感覚が先生を厳しい労働環境に追いやっている大きな一因だと思う。もっと親が自分の子どもは自分でしっかり見守り、学校での子どもの生活を理解する必要がある。そして、積極的な教育参加をすべきである。ただし、ここで言う積極的な教育参加は縁の下の力持ち参加までで良い。勉強は先生に任せれば良い。要らん口出しはせず、先生を信じて子どもをゆだねるのである。そうすれば、先生が授業に費やせる時間が増え、子どもたちにも良い成果となる。先生が真剣に授業に取り組む職場環境が整っていければ、すぐに教員不足も解消するのではないだろうか。
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