ひと昔前までは、「子どもは風の子、大人は火の子」と言って真冬でも半袖、半ズボンの子どもがたくさんいた。最近は真冬に半袖、半ズボンの子どもをほとんど見ない。それより立派な厚手のコート、長ズボンを皆が着ている。家でも暖房が完備され、隙間風が入るような家など昔の話になった。新型コロナ感染症の蔓延もあり、「除菌」「抗菌」の文化が今まで以上に高まってきている。
「麦踏み」と言う言葉がある。「温室育ち」と言う言葉がある。「麦踏み」は麦が発芽し、地面から直接葉が出てきた頃に足で踏みつけて行く作業。麦が強く育つように踏圧するのである。かたや「温室育ち」はビニールハウスで温度や湿度を管理し、害虫からも守り、懇切丁寧に育て上げる作業。どちらもより多く、より美味しいものを作る為の生きた農業手法のことである。どちらも子育てによく置換され話に出てくる。
親が朝、学校に着て行く洋服を揃えて置く。魚の骨が喉に刺さらないように食事の時に骨を取って食卓に出す。親は出来る限り子どもの為にいろいろな便宜を図る。そう言った意味では現代は受動的な「温室育ち教育」が当たり前になっているように思える。かたや能動的な「麦踏み教育」は幼児期より玄関掃除やお風呂洗い、食器洗い、枕元に翌日学校に着て行く洋服の準備など、自分のことは自分で出来るように独立心を育み、厳しい躾をする。
今の親世代は親に保護されて育って来た「温室育ち」世代ではないだろうか。外国を訪れ、日本だけが違うなと思うことがある。それは「家族の絆」感が日本だけ非常に薄いと言うことである。欧米でも、アジアでも、第一に「家族」である。家族の絆を第一優先で生活している。昭和の時代までは、まだ日本も「家族の絆」感が強かったように思える。ではなぜ日本は「家族の絆」感が薄くなってしまったと感じるのだろうか。そこは「温室育ち教育」が広がったからではないのかと思える。「麦踏み教育」には礼節が不可欠である。『お母さんに作って頂いたご飯を食べる。だから食後食器洗いは母に対する感謝の気持ちと母を労う。』『家族全員で夕食、父親が座って「いただきます。」を言うまで子どもは食事に箸を付けられない。そこには父親を敬う気持ちを自然に育成している。』生活を通し、自然に礼節を身に付けていく事が親子の絆を強めて来たのではないかと思う。
どの世代の親も世の中の社会形態や環境は変われど、子どもを安心・安全に育てたいと言う気持ちは同じである。しかし、「温室育ち教育」では「親子の絆」を強くすることは難しいと思う。それは親から一方的に受けるだけで自主性を損ない「当たり前」感しか育まれないからである。かたや今の社会では難しいのかもしれないが、「麦踏み教育」が少しでも取り入れられれば子どもは自然に礼節を身に付けて行くので、今以上に親子で共感し合い、絆を深めていく事が出来るように思える。
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