COLUMN

コラム

2010年、中国にGDPで抜かれ3位になるまで日本はずっと経済大国だと思っていた。IMF(国際通貨基金)の先日の発表によると、2022年の日本のGDPは世界で3番目の4兆2,335億ドル。1位はアメリカの25兆4,644億ドル、2位は中国の18兆1,000億ドルとその差を大きく引き離されている。2023年にはドイツにも抜かれ、世界4位になるとの見通しが示された。そして経済協力開発機構(OECD=38カ国加盟)調査で高等教育15年勤務経験ある公立学校教員の法定給与(税引き前)を比較すると、日本は年間4万7,349ドルで加盟国平均5万3,456ドルを6,107ドル(92万円程度)も下回っている。OECDの加盟国中GDPが日本より上回っている国はアメリカしかないこの環境下で、である。

経済の話をしたい訳ではない。教員の待遇の話がしたい。
東京都の場合、勤務時間は休憩時間を除き1週間について38時間45分と決まっている。出勤時間や退勤時間は学校ごとに校長が定めている。しかし、教員が決められた時間通りに退勤しているという話を一度も聞いたことがない。授業の他にも生徒指導やクラブ活動、運動会、文化祭などなど多くの仕事が課されている。持ち帰り残業含めて、ひと月の時間外勤務は平均96時間を超え、過労死ラインの80時間以上の教職員が、5割を超えていることも明らかになった。給料は安い、仕事は多い、これでは優秀な教員を確保することは難しいのではないかと思う。文部科学省も教職員の給与面での待遇改善を進めているが、給与だけの話ではない。業務の改善をすることの方が急務だと考える。
私は、この国の明治以来の近代化への繁栄は勤勉な国民性と教育制度にあると思っている。第二次世界大戦からいち早く復興を遂げ、終戦から20年も経たないうちに東京オリンピックも開催した。そんな国民の勤勉さは今も大きく変わっているとは思えない。変わっているのは世界も含めた生活環境だと思う。日本の誇る明治以来の教育制度自体が時代に完全に取り残されていることは、教育関係者なら誰でもが認識している。古いままの教育制度の元では、もはや業務を遂行できなくなって来ている。業務(作業)で省略できるものは徹底して省略し、せっかく全国の公立学校に一応Wi-Fi環境も構築できた今、できる限りデジタルの力で解決できるものはデジタル化を進めるというように指針自体を変えてはどうだろうか。

先日、小学校へ行ったときに50代の先生が文章を「一太郎」というソフトで作られていた。一般企業で今「一太郎」を使っている企業は少ないと思う。「ワードを使わないのですか。」と問うと「ずっと一太郎を使っているのでワードが使えない。」と言う。これこそ弊害である。先生方が悪いのではない。勤勉という国民性がいつも邪魔をするのか、何事も大上段に構え、何年も時間をかけデジタル化を進めても意味がない。それほどデジタルの世界の進歩は早い。考えている内に、その政策が古くなってしまう。私企業は利益確保のため「時間と効率」を最も重視する。お金が天から降ってくる役人には、その概念がない。現場で一生懸命やっている教員のためにも、もっとフランクに今ある業務をどのようにデジタルを生かして省略化に結びつけて行けるか、その指針を教育現場に出向き、普段の教員の業務一つひとつから早く引き出すべきであろう。

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