COLUMN

コラム

偏差値という言葉をご存知だと思う。受験等での試験成績を表す数字の物差しである。全受験者の平均点をもとに算出する学力を知るために作られた数値。試験とは切っても切り離せないものになっている。

先日、ある大手私立中学受験塾の合格実績のチラシが目に留まった。難関中学の合格者数とその募集定員が併記されていた。驚いたことに「超難関校」のすぐ下に位置する「難関校」とされる各中学募集定員の3〜5倍もの合格者をこの塾だけで出していた。主だった他の大手塾も同様、募集定員を大幅に超える合格者を出している。これはおかしい。からくりは、併願受験数の明記をしていないところにある。ある塾で一人の成績の良い子が4校受験し全て合格すれば「4人合格」と記すことができるため、4倍の合格者数を出すこともできるのである。併願のなせる技である。最近の私立中学受験は一人6〜7校の受験が当たり前と聞いている。
「超難関中学校」合格のために、「難関中学校」を受験し合格を勝ち取るが、この子たちははじめから入学を考えていない。お試し受験なのである。勉強のできる子は何校も併願受験する。「難関中学校」に合格できる力が十分ある子どもたちばかりなので募集定員より何倍もの合格者数が出ていてもおかしくはない。
塾側は合格者数を多く見せ、次年度に向け、より多くの受験生を呼び込む戦略であろう。広告的には嘘ではないのだろうが、日本広告審査機構JAROが言う「紛らわしい広告」であると思えてならない。どこの塾もやっていないが、子どもたちの為に、その塾の各中学校別に合格者数と入学者数を併記すべきであろう。

学校でも偏差値重視になっている。子どもたちの能力を偏差値という物差しだけで優劣をつけるような教育でいいのであろうか。私は絶対に間違っていると思っている。
偏差値は「答えがある問題」の答えをいかに多く出せるかの指針でしかない。記憶力と、解答の出し方のテクニックをいかに多く「覚えられる」かで、高くなる。だから昔から私は「記憶力≑偏差値」だと思い偏差値を疎んじてきた。一方答えのない問題の解答の指針に偏差値はなりにくい。「偏差値が低い、だから頭が悪い。」は通用しないと思っている。これからの子どもたちに求められているのは、記憶力や暗記力ではないと思う。今後起こりうるいろいろな「答えのない問題」をどのようにして解決していくかの力=思考力や判断力、洞察力。」だと思っている。偏差値で子どもの能力を見るのではなく、一人ひとりの子どもの可能性を見出し、育むことこそが真の教育ではないのだろうか。

*偏差値は「(個人の得点−平均点)÷標準偏差×10+50」という式で計算できる。標準偏差とは、得点の散らばり具合を表すもので、模試や科目などにより異なる。
 標準偏差は「(点数−平均点)の二乗の総和÷受験者数の平方根」によって算出できる。
 ※平均点60点のテストで80点を取った場合(標準偏差20):(80ー60)÷20×10+50=60 で偏差値は60となる。

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