COLUMN

コラム

2022.08.10

これで良いのか「私立中学受験」

先日、東急東横線「自由が丘駅」に降り立った。夏休みと言うこともあり、平日の割に多くの人が行き交いしていた。駅改札口に立つと始めはポツリポツリであったが、時間が経つにつれ、背中に大きなリュックサックを背負った小さな子どもたちが大挙して駅に向かって来た。聞くと、ある大手進学塾の夏期講習の帰りであった。夏期講習は夏休みが始まると同時に毎日あるとのこと。朝8時半から夕方5時まで塾の講習が行われていると言うのである。聞いた瞬間、私は「なんという悲劇。」を感じざるを得なかった。夏休みといえば、海水浴や川遊び、昆虫採集など子どもにとって、普段出来ない体験学習ができる最も充実した期間。それが中学受験という名の下、大事な夏休みを削り取ってしまっている。この現実を目の当たりにして、私は今の子どもたちが可哀想でならない。

先生方の働き方改革、保護者の高学歴化・共働き率の増加、コロナ感染などでここ数年、私立中学受験者は増加していると言う。また、私立中学校側も少子化が進み、存続をかけて生徒確保に躍起になっていると言う。
最近の中学受験進学塾の入塾は3年生〜4年生が平均だと言う。こんな小さい時から夏休みも休めない中学受験の仕組みそのものがおかしい。首都圏では1月下旬から2月初旬にかけて入試が行われている。高校受験のような内申書での評価はなく、全て試験の点数だけで合否が決まると言う。年明けからは入試の最終段階に入る。1月は中学受験組は学校を休み受験勉強だけに取り組む。これが普通になり、それを学校側も黙認していると言う。平均1/3の受験生が合格、2/3の受験生は不合格になると言う。子どもは成功体験を多く持たせることが教育の大きな糧になると確信している。2/3の受験生のように、わざわざ夏休みを削ってまで受験に失敗させ、不成功体験をさせる必要があるのだろうか?

勉強はいつでも出来るが、人生において最も大切な人間性を育むという意味では、小学生の夏休みは勉強よりも大切な時期であると思う。人間が生きている環境や自然と向き合う絶好の季節でもある。それ以上に私立中学受験、進学塾が大切なのであろうか。中学受験自体は各家庭の親の価値観と、その子どもの頭の出来・不出来の問題もあるだろうから否定はしない。しかし、不出来な子も含めて、小さな子どもを塾に通わせる親の価値観、心境が私には全く理解出来ない。

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